金田一37歳の事件簿がまさかの最終章。
単行本派の私は帯を見てびっくり。
金田一37歳の事件簿(18)
天樹征丸 (著), さとうふみや (著)
最終章であり最終巻ということで1冊で事件編から解決編までが収録されている模様。
今回は事件編まで読んで予想してみたいと思います。
事件編までというのは「謎はすべて解けちまったぜ・・・!」という金田一のセリフのところまでです。
続きは読んでないのですが、こればかりは信じてもらう他ありません。
雑誌派やすでに単行本を読み終わっている人たちは高みの見物でよろしく。
■登場人物
金田一
葉山
氷川※被害者
鹿爪
松浦
■事件
鍵のかけられた屋上から氷川が落下死。
自殺と殺人の両方の線で捜査。
自殺とすれば単に氷川が飛び降りただけ。
殺人とすれば誰かが屋上から落としたことになるが、屋上の鍵は氷川が持っていたものと警備室のスペアのみ。(複製は不可)
スペアを使ったとすれば氷川の後に警備室に出入りした葉山と鹿爪。
そして自由に出入りできる警備員の松浦の3人。
■不可解な点
・密室の意味
私は屋上を擬似的に密室にする意味がわかりませんでした。
扉の描写を見る限り鍵を開閉できるのは内側からだけで、屋上側から施錠することができません。
氷川が鍵をかけて屋上に戻ることは非常に困難。
それこそ悪魔的なトリックを考える必要がある。
が、自殺する者が密室を演出する意味がまるでない。
(不可解な死で関係者を混乱させることはできるが)
つまり密室にすることで、自殺の線がかなり薄れたということ。
犯人にとってこのトリックのメリットがさっぱりわかりませんでした。
自殺に見せかけたいのだったら密室にしない方がよかったんじゃないかと。
(作中で金田一が介入するまで自殺の線で進んでいたことが私にはわからない)
・スペアキー
氷川を殺害したあとスペアキーで鍵をかけて戻るというだけならトリックでもなんでもない。
スペアキーを戻す際に目撃されるリスクもある。
メタ的になるが作中でもそんな単純なトリックではないはずと言っている。
推理ものとしても非常につまらない。
・防犯カメラ
社内の人間なら防犯カメラのことは知っているはず。(金田一も知っていた)
警備室に出入りしているところが映っていては容疑者候補も必然。
他にもたくさんの人が出入りするところならともかく、下手したら自分以外映ってなかったなんてことも。
これは今回映っていなかった警備の松浦の場合だと、誰も映っていなかったとき(誰も出入りがなかったとき)に自分以外疑われる自分物がいなくなってしまう。
これはスペアキーを使うことも併せて、松浦にとってはリスクの高い犯行になってしまう。
■容疑者を絞る
今回の事件は小美野のメッセージから分かる通り、金田一への挑戦ということであらかじめ考えていたのだと思います。
今回の事件のキモは屋上の密室という点。
氷川が屋上に来なければ始まりません。
そして氷川を被害者に選んだのは組織を抜けようとしたから。
氷川が音羽ブラックを退職することを知らなければ排除しようとは思わなかったはず。
氷川の退職については金田一が知らなかっただけでなく、葉山と松浦も知らなかったこと。(知らないふりの可能性は考えない)
この2人が計画的な犯行ができた可能性は非常に低い。
退職について上司に報告することは当然なので鹿爪は知っていたはず。
会社内に他の従業員がいる時間帯の犯行は目撃のリスクが高いのでプランターの水やりを後回しにするくらい多忙に仕事をさせることも大事。
この点においても葉山や松浦にコントロールできることではない。
おそらく誰もいない屋上で組織と連絡を取るためにプランターの水やりの仕事を受けていたんだと思う。
残るは鹿爪。
■犯人は鹿爪か?
部長の立場なら氷川の事情だけでなく金田一の事情も把握しやすい。
仕事の配分もコントロールできるはず。
しかし疑問が残る。
密室の謎と防犯カメラ。
密室の謎というのは密室のトリックのことではなくその目的。
鹿爪が犯人だとしたら屋上で氷川を殺害しスペアキーで施錠して鍵を戻したという流れ。
防犯カメラにも映っているし、遅い時間帯とはいえ松浦もいるわけで目撃のリスクがなくなったわけでなない。
目撃されるリスクを犯すだけのリターンがまるでない。
心情的な話をしてみる。
私は別に心理学を学んだわけではないので学問的に合っているかはわからない。
あくまで私の個人の感想ということになる。
防犯カメラを知っていても忘れていることはあると思う。
常にここにカメラがあってあっちとこっちは映っている、なんて考えながら生活している人は少ない。
こういう人たちの共通点は何かというと、後ろめたいことがない、という点ではないかと思う。
つまり何もしていない人がいちいちカメラを気にして行動していないということ。
鹿爪が映ったのは後ろめたいことがないという心情の現れと言っても過言ではない。
■では誰か
ここで密室の謎について考える。
これもメタ的な考えになってしまうが、何かしらのトリックを仕掛ける場合、必ず目的がある。
主に2つ。
「アリバイ作り」と「容疑者のミスリード」。
犯行不可能だと思われたら容疑者から外れる。
そして疑いを別の人物に向ける。
これは復讐が目的だったり、偽の遺書と共に自殺に見せかけることが定番だが。
氷川を殺害後、鍵をかけ警備室に鍵を戻す、という犯行の流れを想定した場合、警備の松浦ほか防犯カメラに映った人物が容疑者となり、それ以外は容疑者から外される。
ということは、この一連の犯行の流れを想定したときにアリバイを獲得でき、氷川の事情や仕事をコントロールでき、金田一の行動も把握できている人物が犯人ということになる。
そしてその人物はただ1人しかいない。
内神田。
■密室のトリック
確証はないが作中で紹介されたジップラインの原理を使ったのだと思う。
ただ私はジップラインの原理を知らないので以下の説明が合っているか自信がない。
・氷川を気絶させる
・鍵を奪う
・ジップラインの仕掛けを準備
・屋上を出て(ビル内に入る)施錠する
・隣のビルの階段から氷川をジップラインを利用して移動させる
・ポケットに鍵を入れる
・ジップラインを利用して屋上付近まで移動させて落とす
こういう流れかと。
もう一度言うが私はジップラインを知らないので曖昧な説明となってしまった。
事件の前後で氷川のベルトが変わっていることに金田一が気がついた。
もともと着けていたベルトは、名前は忘れたが私も使ったことがあって締めやすく非常い便利。
ただ締めやすい反面、どこまでも締まってしまう点がある。
そしてロックが外れやすい場合がある。
事件後は通常の穴あきベルトに変わっていた。
これは元のベルトと違い、締める位置を決めたらあとはどんなに引っ張っても締まりません。
またロックが簡単に外れることはありません。
この違いが犯行にとって重要な違いだったんじゃないかと思います。
ロープに引っ掛ける際にベルトを使用したのだとすると、締まりすぎても急に緩んでも良くない気がします。
ジップラインを知らないのたんなる予想になってます。
■推理ではなく予想
これまでの話はすべて予想になります。
というのも、犯人は内神田とは思うが証拠がない。
トリックが分かればおのずと絞られると金田一が言っていますが、私にはさっぱり。
可能性が低いというだけで鹿爪にも可能な犯行であり、鹿爪が犯人ではないという証拠がない。
内神田が犯人だといろいろ説明がつくと言うだけで証拠をつかめていません。
氷川に残業させていたとか、そんな「あいつ怪しい」レベルの予想になっています。
葉山については完全にミスリード。
犯人のではなく、作者から読者へのミスリードだと思います。
まあファンサービスでしょう。
■続きが気になるので・・・
確証とまではいかなくても、決め手になるシーンがないか何度も確認しましたが発見できず。
もしかしたら次の話でいろいろ出てくるかもしれません。
もっと粘ることも考えましたが、続きが気になるのでここらで切り上げようと思います。
氷川の別れた婚約者が冤罪から自殺というのも高遠が絡んでいたのでしょう。
探偵の周りで事件が起きすぎ問題という探偵モノの定番ネタを逆手に取った話作りは見事。
金田一の周りで事件が起きていたのは偶然じゃなかったということが判明しました。
まだまだはっきりしないことがありスッキリしませんが、続きをオアズケしている現状のモヤモヤの方が大きいので続きを読むことにします。
その感想や反省会については後日。
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